独特な仕草や愛らしい表情で、ペットとして多くの人々を魅了し続ける水棲カメ。日本ではミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)、クサガメ、ニホンイシガメなどが人気ですね。しかし、そのユニークさゆえに、健やかに育てるためには特別な知識と環境が必要です。
今回は、元プロのアニマルキーパー(動物飼育員)であり、40年以上のキャリアを持つスコット・デイビス氏の海外のインタビュー記事をもとに分かりやすくまとめさせていただきました。カメを家族として迎える前に知っておくべき心構えと、快適な住環境の構築テクニックについて詳しくご紹介します。
1. カメを迎える前の「責任ある選択」
カメを愛する飼育者として最も重要なのは、「飼育下で繁殖された個体のみをパートナーに選ぶこと」だとスコット氏は力説します。
・野生の個体は自然のままに: 例えば、道路を横断しているカメを見かけたとき、安全な場所へ移動を手助けするのは素晴らしいことです。しかし、そのまま家に連れ帰ってペットにしてはいけません。彼らにはすでにその自然環境の中で確立された生活があるからです。
・野生への放流は絶対NG: 反対に飼育下にあるカメを野生に放すことも決して行ってはいけません。ペットの命を危険にさらすだけでなく、地域の在来生態系に回復不能なダメージを与える原因になります。
・40年という長い寿命: 水棲カメの中には、適切な飼育下で最長40年生きる種類も存在します。カメの飼育は決して一時の「衝動買い」であってはなりません。
「動物のため、そして私たちが暮らす地球のために、正しい選択をしてください。事前に徹底的にリサーチして準備を行い、飼育下で繁殖されたカメを迎えることで、責任ある管理・保護の精神(stewardship)を実践しましょう。」 — スコット・デイビス
2. カメにとっての「理想のマイホーム」を設計する
カメは自ら体温を調節できない変温動物です。そのため、水槽内に意図的な「温度のグラデーション」を作り出す必要があります。
◆ 理想的な住環境の基本構成
カメが自由に体温を調整できるよう、水槽内を大きく2つのエリアに分けることが推奨されます。
・ホットエリア(バスキングスポット): 水槽の片側に陸地を作り、その上にヒートランプ(バスキングライト)を照射します。カメが完全に水を離れ、体をしっかり乾かして暖まれる場所が必要です。
・クールエリア: 反対側には、過剰に暖まらない日陰の陸地や、体をクールダウンできるスペースを確保します。
◯安全な水温管理: 水環境を常に一定の理想的な温度である26℃程度に保つため、カメが触れても安全なプロテクター付きの水中ヒーターを導入してください。
【水槽サイズの選び方】 多くの水棲カメは成長すると非常に大きく育ち、寿命も長いため、水槽は「大は小を兼ねる」が基本です。成体時のサイズをあらかじめリサーチし、成長後も十分に動き回り、探索できる広さを確保しましょう。
◆ 骨と甲羅を守る「UV光」の真実
健康な骨や頑丈な甲羅を発育させるためには、信頼できるUV(紫外線)ライトが不可欠です。 「確実なUV照射を行うためには、水槽の長さに合わせて設計された専用のUV蛍光灯を設置し、カメが環境内のどこにいても一定の光を浴びられるようにするのがベストです」とスコット氏はアドバイスします。
◯窓際への設置は逆効果? よくある誤解として「窓際に水槽を置けば、自然光で十分ではないか」と思われがちです。しかし、ガラスは紫外線を遮断してしまうため、必要な紫外線は届きません。それどころか、直射日光によって水槽内の温度が急激に変化し、カメの健康に重大な悪影響を及ぼす危険性があります。
◆ 「お尻で息をする」カメと、命を守る水質管理
水棲カメはかなりの時間を水中で過ごします。実はカメには、排泄・排便・繁殖を司るお尻の穴「総排泄腔」を使って、水中で呼吸やガス交換を行うという驚くべき能力が備わっています。文字通り「お尻で息ができる」のです。
それゆえに、飼育水の美しさを保つことは、カメの呼吸環境を守ることに直結します。
・優れたろ過フィルターを導入し、水質を安定させること。
・食べ残しや排泄物などのゴミは、見つけ次第こまめに取り除くこと。
もし十分なフィルターがない場合は、最低でも週に1回、すべての水を交換する必要があります。また、カメが万が一にも溺れてしまわないよう、水深が深くなりすぎないような配慮も忘れないでください。そして、カメや水槽に触れた後は、感染症予防のために必ず石鹸で丁寧に手を洗いましょう。
後編「完璧な栄養バランスと健康管理」へ続く

ZOO LINK※本記事は、Mazuri®公式サイトの公開情報を基に、当ブログが日本の飼育者向けに分かりやすく要約・編集したものです。

